今夏、ドイツ・ブンデスリーガからイギリス・ニューカッスルへ総額8000万ユーロでの移籍が決定したニック・ヴォルテマーデ(Nick Woltemade)
今シーズンイサクを欠く可能性のあるニューカッスルにおいて待望のCFの加入となりましたので、今回は彼について紹介していきます。
ゴールで綴る成長譚 ーー港町の少年が欧州の頂を目指すまで
2002年2月14日、ドイツ北部の港町ブレーメンにニック・ウォルテマーデは生まれました。地元のクラブでサッカーを始めると同時にハンドボールにも親しみ、複数の競技経験によって動きの多様性や反射神経を磨きました。
2010年、わずか8歳でヴェルダー・ブレーメンのユースに加入すると、その才能は瞬く間に花開き、U-17時代の2018–19シーズンには24試合で18得点8アシストという圧巻の成績を残し、U-19でもゴールを量産して全国的に注目を集めました。
母コリーナさんは、そんな息子を陰ながら支えた存在です。家庭の食卓を「スポーツ選手向けの食事」へと切り替え、成長期の体を支えたことが、ユース時代の重要な試合でゴールを決める力につながったと本人も振り返っています。温かな家庭環境と実践的なサポートは、彼の人間性やプロ意識を形づくる土台となりました。
2020年2月1日、17歳と11か月16日というクラブ史上最年少でブンデスリーガデビューを果たし、長身ながらも柔らかな技術と得点感覚を兼ね備えた“新星”としてブレーメンサポーターに迎えられました。
しかし、当時のチームは降格争いに直面しており、彼自身も安定した出場機会を得られず苦しい時期を経験します。
そこで再起の場となったのが2022年のレンタル移籍でした。3部リーグのSVエルフェアスベルクで31試合10ゴールを挙げ、チームの昇格に貢献。さらにリーグ年間最優秀選手に選ばれたことで、失いかけていた自信を取り戻すことに成功しました。
そして2024年夏、幼い頃から憧れたVfBシュトゥットガルトと4年契約を締結します。移籍初年度の2024–25シーズンにはブンデスリーガで12得点、公式戦全体で17ゴールを記録し、DFBポカール決勝でもゴールを決めて優勝に貢献しました。瞬く間にサポーターの心をつかみ、このシーズンの活躍によって新人賞やベストイレブンにも名を連ねる飛躍の年となりました。
代表チームにおいても、その歩みは止まりません。ドイツU-21代表で18試合13ゴールと高い決定力を誇り、2025年のU-21欧州選手権では大会得点王に輝いてチーム・オブ・ザ・トーナメントにも選出されました。
同年6月にはA代表デビューも果たし、“Big Nick”“Goaltemade”といった愛称で注目を集める存在へと成長しています。本人は2026年ワールドカップ出場を明確な目標に掲げており、その実現可能性は日ごとに高まっています。
インタビューでは母や家族への感謝を繰り返し口にしており、その家族思いで誠実な人柄もファンから高く評価されています。
2025年夏にはプレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドへ、クラブ史上最高額の移籍金で加入しました。国際舞台での新たな挑戦が始まったばかりですが、本人は「さらに大きな舞台で成長し続けたい」と意欲を語っています。
高い身体能力だけでない ーー欧州を驚愕させ続ける“現代型CF”
2024–25シーズン、ヴォルテマーデはブンデスリーガのVfBシュトゥットガルトで飛躍を遂げました。序盤は途中出場が多かったものの、11月以降に先発へ定着し、攻撃の軸として存在感を放ち続けます。その過程で、彼のプレースタイルは大きな進化を遂げました。
攻撃面での進化
鍵となったのは 「高さ+リンクプレー+自らの裏抜け」 の融合です。従来はポストプレーや周囲を活かす動きに秀でていましたが、このシーズンはゴール前に飛び込む鋭さが加わりました。
代表的な例が、2月のヴォルフスブルク戦(第22節)。途中出場直後に相手最終ラインから付近から降りてボールを引き出すと、そこから自ら持ち運び、ディフェンスラインを切り裂いて独走ゴールを決めています 。まさに「リンクプレー」の進化を体現した一撃でした。
さらに、4月のDFBポカール準決勝ライプツィヒ戦では、アタッキングサードで味方がボールを持つと、素早く反応し相手CBのマークを巧みに外して味方と細かくパス交換をすると、57分に自ら追加点を記録。73分にも自身の強みである高さを活かして3点目が生まれ、相手を突き放しました 。ビルドアップに絡みつつ、最終局面で結果を残す姿勢が際立った試合です。

数字で裏付けられる安定感
リーグ戦では 12ゴール・2アシスト をマーク。ブンデスリーガ公式も「ヴォルテマーデ12ゴール集」を公開し、その存在感を強調しました。期待ゴール(xG)はスタッツサイトにより差はあるものの、FotMobの集計では xG 10.4 と実際の得点とほぼ一致 。シュートの安定感を数字が裏付けています。
守備面での献身
セバスティアン・ヘーネス監督が重視する前線からのプレスでも、ヴォルテマーデは高さとリーチを生かして相手GKやCBに圧力をかけました。ボール奪取からそのままゴール前に顔を出す二面性は、「ストライカー」でありながら「前線の最初の守備者」としての機能をも担っていました。
戦術的な完成度
シーズンを通じて、彼は 「サイズ×足元×推進力」 の三位一体を高いレベルで発揮しました。高さを生かしたクロス対応やセットプレーの強みは健在でありながら、足元の技術や展開力、運ぶドリブルもバランスよく噛み合い、プレーメイキング型ストライカーとして完成度を高めました。
欧州からの評価と移籍
こうした活躍は欧州全体の注目を集め、2025年8月末にはプレミアリーグのニューカッスルがクラブレコードの移籍金で獲得。
ヘーネス監督は「Nickは中心選手として計算していた。彼の離脱は非常に大きな痛手だ」と語り 、チームにとっての重要性を強調。 一方、ニューカッスルのエディ・ハウ監督は「彼はまさに我々が探し求めていたタイプ。技術的に優れ、まだ成長の余地がある」と期待を寄せています 。
プレミアではリーグでは、シュトゥットガルト時代以上に多彩な起用が見込まれており、さらなる進化が期待されます。
飛躍のシーズン(24/25ブンデスリーガ)を過ごしたヴォルテマーデのスタッツはこちら↓
出場記録
項目 | 数値 |
---|---|
出場試合数 | 28 |
先発出場 | 17 |
1試合平均出場時間 | 58分 |
総出場時間 | 1636分 |
チーム・オブ・ザ・ウィーク選出 | 2 |
攻撃
項目 | 数値 |
---|---|
ゴール | 12 |
期待ゴール (xG) | 10.36 |
得点間隔(平均) | 136分 |
1試合平均ゴール | 0.4 |
シュート総数 | 1.8 |
枠内シュート/試合 | 0.9 |
ビッグチャンス逸失 | 11 |
決定率 | 24% |
FKゴール | 0 |
FK成功率 | 0% |
ボックス内得点 | 12/48 |
ボックス外得点 | 0/1 |
ヘディング得点 | 1 |
左足得点 | 2 |
右足得点 | 9 |
獲得PK | 0 |
パス
項目 | 数値 |
---|---|
アシスト | 2 |
期待アシスト (xA) | 3.44 |
ボールタッチ数 | 32.3 |
ビッグチャンス創出 | 8 |
キーパス | 1.3 |
パス成功数(合計) | 12.3(72%) |
自陣でのパス成功数 | 3.3(83%) |
敵陣でのパス成功数 | 9.0(67%) |
ロングボール成功数 | 0.2(38%) |
チップパス成功数 | 0.3(38%) |
クロス成功数 | 0.04(17%) |
守備
項目 | 数値 |
---|---|
インターセプト | 0.04 |
タックル数 | 0.4 |
ファイナルサードでのボール奪取 | 0.4 |
ボール奪回数 | 1.9 |
ドリブル突破を許した回数 | 0.1 |
クリア数 | 0.5 |
シュートに直結するミス | 0 |
失点に直結するミス | 1 |
PK献上 | 0 |
1試合平均
項目 | 数値 |
---|---|
成功ドリブル | 1.1(46%) |
デュエル勝利数 | 4.4(41%) |
地上戦デュエル勝率 | 2.6(39%) |
空中戦デュエル勝率 | 1.8(45%) |
ボールロスト | 11.4 |
ファウル数 | 0.9 |
被ファウル数 | 1.3 |
オフサイド | 0.2 |
イエローカード | 3 |
退場(警告2枚) | 1 |
レッドカード | 1 |
まとめ
ニック・ヴォルテマーデは、まさに「最高の素材」と呼べる存在です。
高さと足元の技術、そして推進力を兼ね備えた稀有なCFとして進化を続けており、今夏ニューカッスルに加入したことで新たな挑戦の舞台を得ました。
プレミアリーグという世界最高の環境にすぐさま適応し、ゴールを量産できるかは未知数ですが、戦術理解やメンタル面で順応すれば、そのポテンシャルは一気に開花するでしょう。
適切な指導と環境が整えば、彼は単なる有望株にとどまらず、将来的には世界最高峰のストライカーとして名を刻む可能性を大いに秘めています。
今期のニューカッスルとヴォルテマーデの活躍に期待しましょう!!!