「ファンタジスタ」、この肩書きを背負ってプレーしているフットボーラーが消滅しかけている現代サッカー。そんな中で1人のワンダーキッドが今、ロンバルディアから生まれようとしています…
今回はセリエA、コモに所属しているニコ・パス(Nicolás “Nico” Paz Martínez) について紹介していきます!
コモの新星・ニコ・パス――アルゼンチンの血を受け継ぐスペイン育ちの技巧派MF
ニコ・パスは2004年9月8日、スペイン・カナリア諸島のテネリフェ島で生まれました。アルゼンチン人の父パブロ・パスは、1998年フランスW杯にアルゼンチン代表として参加した元ディフェンダーで、アトランタ五輪でも銀メダルを獲得しています。母はスペイン人であり、ニコ自身は二重国籍を持ち、幼少期は温暖なテネリフェで育ち、地元のクラブでサッカーを始めました。

2016年、12歳のニコ・パスはスペインの名門クラブ、レアル・マドリードのカンテラに加入しました。そこから順調に各年代を昇格し、ユースチームでは中心的な存在としてプレーしてきました。2021-22シーズンにはUEFAユースリーグでも活躍し、次世代を担う逸材として注目を集めます。さらに2022年からは、ラウール監督が率いるレアル・マドリード・カスティージャ(Bチーム)でプレーし、プロへの階段を着実に上り始めました。
そして2023年11月、19歳の若さでチャンピオンズリーグ・ナポリ戦においてトップチームデビューを果たします。しかもデビュー戦で得点を記録するという快挙を達成しました。19歳82日でのゴールは、クラブ史に残る最年少記録のひとつとなり、一気に世界の注目を集めたのです。
2024年夏、セリエA昇格を果たしたコモがニコ・パスを完全移籍で獲得しました。契約期間は2028年までの4年間で、移籍金は約600万ユーロとされています。さらに、レアル・マドリードには50%の売却益分配条項と買い戻しオプションが付与されており、将来的に復帰が検討されるほどの逸材として扱われていることが分かります。
2024-25シーズン、ニコ・パスはコモの主力としてリーグ戦30試合以上に出場し、6ゴール、8アシストという目に見える結果を残しました。昇格クラブながらセリエA残留を果たしたチームに大きく貢献したのです。コモの監督であるセスク・ファブレガスも以下のようなコメントを残しています。
“He’s a special player and he must be free to express himself,” Fabregas said at a post-match press conference. “We must not make him robotic. I spoke to him this morning and he wanted to play. He was ready.”
「ニコは本当に特別な選手で、ピッチの上で自分を自由に表現できる環境が必要だ。決してロボットのようにプレーさせてはいけない。今朝彼と話したけれど、プレーする意欲は十分にあるし、準備も整っているよ。」
現役時代の活躍はまだ記憶に新しいスペインのレジェンドからこのように表されていることからも彼の才能は間違いないことが理解できます。
また、今夏トッテナムが7,000万ユーロという高額オファーを提示したと報じられました。しかし、コモもレアルもこれを拒否。コモ会長は「彼がレアルに戻ってしまうのではと恐れたが、今は残ってくれて本当にうれしい」とコメントしています。このような彼の才能を考えると、今後レアルが買い戻しオプションを行使する可能性は高く、去就は引き続き注目の的です。
ニコ・パスのプレースタイル 〜現代型ナンバー8〜
ニコ・パスは、中盤でプレーするエレガントな攻撃的ミッドフィールダーです。中央でボールを受けながらも低い位置まで下がってビルドアップを助け、自らドリブルで運ぶ推進力を持っています。長短のパスやスルーパスの精度が高く、一瞬で守備から攻撃へ切り替えることが可能で、視野の広さも際立っています。さらに、コーナーやフリーキックを含むセットプレーも得意とし、攻撃の起点としてチームに大きく貢献しています。
彼の持ち味は、リズムを作るパスワークと積極的なシュートに加えて、高いドリブル成功率やオフザボールでの賢い動きにあります。狭いエリアでもボールを失わず、ターンして前を向くプレーが得意で、そこから縦パスやシュートにつなげることができるのも強みです。
戦術的には、セカンドラインやハーフスペースを主戦場とし、前線とのつなぎ役を担います。守備においてもプレスやタックルをいとわず、切り替えの早さでチームを助けるタイプです。体格にも恵まれており、フィジカルバランスが良いため当たり負けしにくい点も評価されています。
スタイル面では、落としパス、カットイン、ミドルシュート、ショートパスでの組み立て、さらにはタックルなど、多様なプレーをこなします。単なる攻撃的MFにとどまらず、守備でも存在感を示せる万能型であることが特徴です。
総合的に見ると、創造性と決定力を兼ね備え、攻撃の組み立てからフィニッシュ、守備での切り替えまで幅広くこなせるミッドフィールダーと言えます。セスク・ファブレガス監督のもとで日々成長を遂げており、今後さらに飛躍する可能性を秘めた才能です。
ニコ・パスのプレー集はこちら↓
飛躍のシーズンを過ごしたニコパスのスタッツはこちら↓
出場記録
項目 | 数値 |
---|---|
出場試合数 | 35 |
先発出場 | 30 |
1試合平均出場時間 | 77分 |
総出場時間 | 2699分 |
チーム・オブ・ザ・ウィーク選出 | 4回 |
攻撃
項目 | 数値 |
---|---|
ゴール | 6 |
期待ゴール (xG) | 9.26 |
得点間隔(平均) | 450分 |
1試合平均ゴール | 0.2 |
総シュート数 | 3.1 |
枠内シュート/試合 | 1.1 |
ビッグチャンス逸失 | 7 |
決定率 | 5% |
FKゴール | 0/12 |
FK成功率 | 0% |
ボックス内得点 | 4/53 |
ボックス外得点 | 2/57 |
ヘディング得点 | 0 |
左足得点 | 6 |
右足得点 | 0 |
獲得PK | 0 |
パス
項目 | 数値 |
---|---|
アシスト | 8 |
期待アシスト (xA) | 3.86 |
ボールタッチ数 | 52.9 |
ビッグチャンス創出 | 11 |
キーパス | 1.5 |
パス成功数 | 28.0 (成功率83%) |
自陣パス成功率 | 9.3 (86%) |
敵陣パス成功率 | 19.0 (79%) |
ロングボール成功 | 0.7 (50%) |
チップパス成功 | 1.2 (52%) |
クロス成功 | 0.3 (22%) |
守備
項目 | 数値 |
---|---|
インターセプト | 0.6 |
タックル/試合 | 1.5 |
ファイナルサードでボール奪取 | 0.7 |
ボール回収 | 3.4 |
ドリブル突破を許した回数 | 0.8 |
クリア | 0.4 |
シュートに直結するミス | 0 |
失点に直結するミス | 0 |
PK献上 | 1 |
1試合平均
項目 | 数値 |
---|---|
ドリブル成功 | 2.0 (成功率54%) |
デュエル勝利数 | 5.3 (勝率49%) |
地上戦デュエル勝利 | 4.4 (47%) |
空中戦デュエル勝利 | 0.9 (57%) |
ボールロスト | 12.9 |
ファウル | 1.3 |
被ファウル | 0.9 |
オフサイド | 0.06 |
カード
項目 | 数値 |
---|---|
イエローカード | 6 |
退場(警告2回) | 0 |
退場(レッド) | 0 |
まとめ
これまでの歩みからも分かるように、彼はすでに最高峰の技術を備えつつ、同じルーツを持つスペインのレジェンド、セスク・ファブレガスの薫陶を受けながら日々進化を遂げています。
来季には、プレミアリーグをはじめとするビッグクラブによる熾烈な争奪戦が待ち受けているでしょう。
そして後に「世界的スター誕生の序章」として必ず語られるであろう、コモでの勇姿を目にできるのは――もしかすると今シーズンが最後かもしれません。
彼のプレーを、ぜひその目に焼き付けてください!!!