フランス育ちのエンゾ・ル・フェーは、繊細なボールタッチと豊かなプレービジョンで注目を集める攻撃的MFです。今季はプレミアリーグのサンダーランドで存在感を高め、狭いエリアでも冷静にボールを扱い、攻撃の起点としてチームを牽引しています。さらに守備面でも高い献身性を発揮し、攻守のバランスを支える重要なピースとなっています。これからのキャリアの歩みを、本ブログでより詳しく紐解いていきます。
キャリア
○2018–2019:ロリアン(リーグ・ドゥ)でプロ契約。
・2019年5月にトップデビュー、公式戦4試合出場。
○2019–2023:ロリアン(リーグ・ドゥ → リーグ・アン)で135試合7得点。
・2019–20シーズンにリーグ・ドゥ優勝で昇格。
○ 2023–2024:スタッド・レンヌ(リーグ・アン)に移籍し、公式戦35試合に出場(リーグ戦25試合)。
○2024–2025(前半):ASローマ(セリエA)に完全移籍。公式戦10試合(リーグ6試合)出場。
○2024–2025(後半):サンダーランド(EFLチャンピオンシップ)へレンタル移籍。
・リーグ戦約20試合に出場し、1得点。昇格プレーオフを経てプレミア昇格に貢献。
○2025–2026:サンダーランド(プレミアリーグ)でプレー開始。シーズン開幕後3試合で1得点。
周囲の環境が育てた愛のフットボーラー____ルフェーの成長と豆知識
1. 困難な家庭環境と父親との関係
ル・フェーの幼少期は決して平穏なものではありませんでした。父親は家庭内暴力や薬物関連で何度も服役し、彼の人生に暗い影を落としました。それでも少年時代のル・フェーは、トレーニングを休んでまで刑務所に父を訪ねたこともあったといいます。複雑な関係ながらも、家族を思う気持ちは強く持ち続けていました。
2. 父親の死を越えて
2021年、彼の父親は自ら命を絶ちます。大きな悲劇でしたが、ル・フェーはその事実を家族やチームメイトにすら打ち明けず、翌日の試合に出場しました。The Timesの取材では「自分の問題は自分の問題」と語り、悲しみを内に秘めながらもプロとしての責任を全うした姿勢は、精神的な強靭さを物語っています。
3. 「ル・フェー」という姓の由来
彼の名前にある「Le Fée」は、母方の姓を受け継いだものです。父の姓ではなく母方の祖父母の姓を名乗るようになり、それが今や彼のアイデンティティとなっています。フランス語で「妖精」を意味するこの言葉は、彼の足元の魔法のようなテクニックとも重なり、サポーターからも特別な響きを持つ名前として親しまれています。
4. 師レジス・ル・ブリスの存在
ロリアン時代に出会った監督レジス・ル・ブリスは、ル・フェーにとって単なる指導者以上の存在でした。肘の大怪我を負った際には精神的にも支え、彼が復活できるよう寄り添い続けました。師弟関係という言葉では足りないほど、彼のキャリアと心を形づくる大きな存在だったといえます。
5. ボールは“妻”のように
プレーへの情熱を象徴するエピソードが、2025年のプレーオフ・セミファイナルでの一幕です。コーナーキックを蹴る前にボールへキスをしたル・フェーは、「ボールはまるで妻のようだ」と語りました。これは彼のサッカーへの深い愛情と集中力を示すものであり、観客の心にも強く残るシーンとなりました。
プレースタイル分析:多機能性が光る“万能型ミッドフィルダー”
パスとゲームメイクの精度
ル・フェーの大きな強みは安定感あるパス能力です。Ligue 1 時代のパス成功率は 87% を超え、試合を通じてボールを循環させる力が際立っていました。特に「前進パス(Progressive Passes)」は 90分あたり約 5.9 回と高水準で、攻撃のスイッチを入れる役割を果たしています。単なる安全なパス回しではなく、ライン間へ縦パスを刺す知性と視野が光ります。
ドリブルとボールキャリー
中盤での推進力もル・フェーの武器です。90分あたり約 3.0 回のボールキャリーを記録しており、パスだけでなく自らボールを運ぶことで相手の守備を動かします。細身ながら低重心を活かしたドリブルは相手のプレッシャーを外す効果があり、リズムの変化で一気に前進できるのが特徴です。
守備面での貢献
攻撃的なプレーメーカーの印象が強い一方で、守備での貢献度も見逃せません。サンダーランドでのデータでは、ボール奪取やインターセプトで高い数値を残しており、特に切り替え時の素早いプレスが際立ちます。体格的に不利な場面もありますが、ポジショニングと読みの鋭さでカバーしています。
セットプレーの精度
フリーキックやコーナーキックといったセットプレーも得意分野のひとつです。数値面では期待アシスト(xA)が 0.1/90分と控えめですが、プレーオフでの決定的なコーナーキックなど、試合を左右するキックの精度を見せています。ピッチ全体に影響を及ぼせる“隠れた武器”といえるでしょう。
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まとめ
昇格組ながらも開幕数節で早くも躍進の兆しを見せているサンダーランド、そのチームの主力として今後期待されているのがこのエンゾ・ル・フェーです。
上記からもわかるように彼のポテンシャルというものは計り知れないものであり、来季にはビッククラブからも注目を集める存在になる可能性も秘めています。